インタビュー

【minne10周年記念】陶芸作家・POTERIEさんインタビュー「作家になり、人生の第2章が始まった」

minneは今年で10周年。そこで、10年間変わらずminneをご利用いただいている作家さんの元を訪れ、10年間の制作をふりかえりながらお話をうかがいました。ものづくりを続ける極意、そしてものづくりがもたらしてくれるものとは。これから作家活動をはじめてみたいという方もぜひご一読いただけたら嬉しいです。

陶芸作家・POTERIEさんにお話をうかがいました。

POTERIE
生活の中の幸せな時間に寄り添えるような、素朴で温かみのある、やさしい器を制作。腕の中にたたずんでいるのは、愛犬のふわりちゃん。
https://minne.com/@poterie11

手仕事の魅力

今回わたしたちは、格子窓、ガラス扉からやさしい光が差し込む、POTERIEさんのご自宅兼アトリエにお邪魔させていただきました。

取材当日は年の瀬。大変お忙しい時期にも関わらず、POTERIEさんはわたしたちを温かく迎えてくださいました。

このたびは、インタビューを受けてくださりありがとうございます。

POTERIE
いえいえこちらこそです。まずはminneさん、10周年おめでとうございます!
10周年のインタビューのお話をいただいたとき、とっても嬉しかったんです。いろんな思い出も蘇ってきて。今日はすこし緊張しているんですが、よろしくお願いします。

ありがとうございます。10年前からずっとminneをご利用いただいているということで、この10年についていろいろお話をうかがえたらと思います。
...と、その前に、こちらの空間はとても心地がいいですね。住居スペースと窯のあるアトリエがひと続きになっているのに自然というか。

お部屋全体は、オフホワイトを基調とした、爽やかながらも温かみのある雰囲気。

キッチン、ダイニングを抜けるとその先に作陶スペースが。作業部屋というよりも、まるでおしゃれな雑貨屋さんのよう。

POTERIE
引越しをしたタイミングで、作陶のための空間をつくってもらいました。でも「気分転換に」などと言ってダイニングテーブルの上などいろんなところでロクロを回してしまうので、あれ?というところに泥がついていたりします(笑)。

木製棚の上にはPOTERIEさんがこれまでに手がけられた陶芸作品の一部がずらり。

暮らしの一部として陶芸が存在しているような印象です。POTERIEさんの器もたくさん並んでいますね。どれも色合い、フォルムがとってもかわいいです。他のインテリアもひとつひとつに目を奪われるのですが、どれも手仕事を感じるような気がします。

POTERIE
わたしは人の手を感じるアイテムが好きで、生活の中でも愛用しているものがたくさんあります。ひとつひとつ微妙に異なる"ゆらぎ”があって、使いながら心が安らぐというか、歪んでいるところを見て、かわいいなと愛おしくなったりするんですよね。

籐カゴ、ガラス、木材など素材ひとつとっても味わいのあるアイテムばかり。

海外の作家・サヌバイさんが手作りの鋳型からひとつひとつ丁寧につくられたカトラリーは毎日の食卓でも愛用中なのだそう。

陶芸にも通じるところがあると思いますが、人の手が入ることで、なんだかより愛おしく、大切に感じますよね。あと、思ったんですが、このやさしい光が差し込む空間で、POTERIEさんの作品が生まれているというのはとてもしっくりきました。どこかほっとするような雰囲気がぴったりです。

POTERIE
ありがとうございます。この空間は心地よくてわたしもお気に入りです。作品には自分のそのときの気持ちだったり考えが伝わるな、あらわれるなと日々感じているので、とっても嬉しいです。

器の居場所

もともとPOTERIEさんが陶芸を始められたきっかけを教えていただけますか。

POTERIE
昔からとにかく手仕事が好きなんです。祖母が趣味で編み物をやっていて、わたしは横にいてこたつに入りながら教わったりしていました。お料理も好きだし、絵を描くことも、手芸も好き。自分で何かをつくり出すことが好きなんですね。

POTERIEさんの作陶に欠かせない道具を見せていただきました。真ん中の木は実はかまぼこ板。ひとつの作品が完成したあと、この板でロクロの上を綺麗にリセットする作業がいちばん好きなのだそう。

POTERIE
つくりたいものがいろいろある中で、あるとき陶芸教室へ足を運んだんです。そこでいちど器づくりを体験してからは、ただもう、土に触れてつくること自体が楽しくて楽しくて。これまでにないくらい夢中になってしまったんです。

陶芸に、他のものづくりとはひと味違う魅力を感じたのでしょうか。

POTERIEさんの作陶の相棒、手動ロクロ。作陶の際はいつも立つスタイルなのだそう。「土に触れているだけでほっと心が和んで安定していく感覚があります」。

POTERIE
そうですね。それぞれに魅力はあると思うんですが、陶芸の場合、作業中にいくつも瞬間の出会いがあるというか。土と釉薬の組み合わせもそうですし、釉薬の配合だったり、筆で塗ったときの垂れ感も。それこそ窯を開けるまではどんな状態になっているか読めないわけですが、そのすべてがおもしろくて。ひたすら器をつくる毎日でした。

POTERIEさんオリジナル配合の釉薬たち。wataame(わたあめ)、milkchocoなどユニークなネーミングが付けられています。

材料と工程がある程度同じでも、最後の焼きあがりの瞬間までどうなっているかはわからないですもんね。思いも寄らない何かが偶然、窯の中で起こることもあるでしょうし。陶芸の奥深さを感じます。

POTERIE
おっしゃる通りです。つくるほどに魅力が深まっていって。そうしてたくさん器をつくって、自分が納得のいく作品ができはじめたとき、今ここにある器を「発表したい」という想いが強くなったんです。そこで知ったのがminneでした。サイトのデザインが好みでしたし、システムが簡単でサクッと手続きできたこともあって、この場所がいいな、minneで作家活動を始めていきたいと思いました。

ありがとうございます。はじめの一歩を踏み出すときの、気軽に進めるかどうかは大事ですよね。

POTERIE
本当にそう思います。あのときの作家登録のための一連の作業のスムーズさがなければ、今もわたしの器はずっとここにひっそりと居続けたかもしれません。

忘れないこと、忘れられないこと

minneで初めて作品が売れたときのことは覚えていらっしゃいますか。

POTERIE
もちろんです!minneを始めて作品を発表できたことに満足していたところ、購入したいという方が現れて...あのときの驚きと喜びは忘れられません。作陶という大好きなことをして、それを喜んでくださる方がいるというのはなんて幸せなことなんだろうって。
そのときの購入者さんとのやりとりを今でも鮮明に覚えていますね。人生最後の日を迎えたときに、真っ先に思い返すであろう大切な思い出のひとつと断言できます。
わたしには娘がいるんですが、彼女を出産した当日に匹敵するほど、生涯での大切な出来事です。

お話を聞いていて、なんだかわたしも嬉しくなってしまいました。作家さんだけが体験できる喜びですよね。他のminne作家さんからも、購入者さんとの温かいやりとりやレビューが作家活動の励みになっているという声をたくさんうかがいます。

POTERIE
対面の販売だと、購入者さんとのコミュニケーションはその場限りの場合がほとんどですが、minneでの販売は作品が手に渡る前後にもコミュニケーションがあるところが好きです。どこに惹かれたのか、どんな風に使うのかというお声を聞けたり、使ってみた感想をいただけたり。それって作り手にとっては本当にありがたいこと。

インターネット上のやりとりだけど機械的かというとそうではなく、逆に「人」を感じますよね。わたしは購入者側ですがとてもわかります。
そうしてminneを10年間使ったいただいて、これまでの作家活動は振り返ってみるといかがでしたか。

POTERIE
minneで作家活動をスタートしてからというもの、いろいろな展開が次々に起きたなとしみじみ思います。その展開が早すぎて、自分にOK、GOサインを出していくのがやっと、というほどでした。販売イベント、minneのCM収録、雑貨屋さんでの委託販売や、海外出店...。

ものすごい広がり方ですね。

POTERIE
予想もしていなかった反響をいただけて、いろんな経験をさせていただきました。中でも特に印象的なのは、やっぱりminneのCM収録ですね。わたしはとても緊張してしまって意識がたびたび飛んでいたんですが(笑)、minneのスタッフさんが終始、和やかな空気をつくってくださって。それはminneのサイトからいつも感じている「安心感」そのもので、かなり救われました。

温かいお言葉をありがとうございます!
ちなみに10年前の自分、またはものづくりと比べて何か変化はありましたか。

POTERIE
わたしの器を手にしたとき、使ったとき、「ほっと幸せになれるもの」をつくるために、ひとつひとつ心を込めることはまったく変わっていません。むしろ初心を忘れないように常に意識をし続けています。器をつくることが大好きで、つくること自体がただただ楽しくて、熱中していた頃の想いを大切にしています。ときどき、壁にぶち当たることはあるんですが、その想いにかえると乗り越えていけるんです。

初心を忘れないために、作陶中ずっと側に置いているという、初期の作品。余計なことは何も考えず、計算せず、手が動くままにつくることが結果、自分らしく、納得のいく作品に仕上がるのだそう。

minneと一緒に

初心を胸につくり続ける10年間の中には、楽しさ喜びはもちろん、例えばスランプだったり大変なこともあったかと思います。率直にうかがいますが、作家活動をはじめて、よかったですか。

POTERIE
はい。わたしは社会人になってからずっとあまりやりたくない仕事をし続けてきたんですね。それがこうして大好きな陶芸に出会い、minneに出会って作家として活動できることになって、「やっとここから」というか。人生の第2章が始まったという気持ちでした。いろんなお客さまとの出会いも生まれて、人生が断然豊かになったんです。

人生の第2章、とっても素敵です。陶芸作家としてこれからの10年間でチャレンジしてみたいことはありますか。

POTERIE
他の作家さんとのコラボレーションに興味があります。どんな形になるかわからないけれど、それがまた楽しみでもあるので、機会があればチャレンジしていきたいですね。あとは、陶芸以外にもものづくり全般に興味があるので、異なる分野での制作もどんどんやっていきたいです。

POTERIEさんが趣味で制作中の編み物と刺し子。刺し子の糸は草木染めのものを使用されているそう。糸の奥にあるのは、絵を描くときのお気に入りだという自然素材を原料としたtuna-kaiさんの手づくりクレヨン。

minneでも異なる作家名で複数のジャンルで作家活動を楽しまれている方は多いので、ぜひ。POTERIEさんの陶芸はもちろん、陶芸以外の制作も楽しみにしています。最後に、ここで何か伝えたいメッセージがあればお願いします。

POTERIE
ではminneさんへ、改めてお伝えしたいです。
10周年おめでとうございます!作品発表の場を与えてくださったminneさんには心から感謝しています。手仕事の素晴らしさを世界に広めていかれる一大ムーブメントを創り出されたminneさん。これからも素敵な世界観とともにこの世界の美しさ、豊かさを創り出されてください。いつも温かな場を提供してくださり、また作家活動を支えてくださり本当にありがとうございます。

POTERIE
そして、POTERIEを愛してくださるみなさんへ。
いつも、ご購入後に日々のお忙しい中、ご感想をありがとうございます。わたしの巡り会う方は本当に素敵な方ばかりなので、わたしは本当に恵まれています。おひとりおひとりの温かなメッセージが日々の創作の励みとなっています。心から感謝申し上げます。

POTERIEさん、本日はお忙しい中ありがとうございました。minneへのメッセージもとても嬉しいです。ハンドメイドマーケットとして、より使いやすく、安心してものづくりを楽しんでいただけるように、そしてよりたくさんの方に作品を届けられるようつとめていきますので、これからもよろしくお願いします。

POTERIE
こちらこそありがとうございました。作家活動を通して、わたしはたくさんの素敵な方々に巡り会うことができました。これまで、minneをはじめたくさんの方々に支えていただき、育んでいただいたという想いがあります。これまでのひとつひとつの素敵な出会い、想い出がわたしの人生においての宝物となっているんです。これからもよろしくお願いします!


【おまけ】なんと、逆サプライズをしていただきました。

取材の最後にPOTERIEさんからひと言。
「今日はお祝いということで、ちょっとしたものを用意してみました」。

なんと、手の込んだ彩り豊かな手まり寿司をふるまってくださいました。こっそり準備くださっていたとのことで、思わず感激。絶品だったことは言うまでもありません。

色鮮やかなローズレモネードには、庭で採れたローズマリーを添えてくださいました。

POTERIEさんの器がお料理の美しさをより引き立てていました。心のこもった素敵なサプライズを本当にありがとうございました。

最後の最後に、取材中、静かにお座りをしながらじっとお話を聞いていたふわりちゃんの姿を。長い時間お邪魔しました。素敵な時間をありがとうございました。

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取材・文/西巻香織  撮影/真田英幸