くま公の多次元戯画ボックス　35

箱型作品にしたのは、絵というものの側面がどうしても気になるからです。もちろん絵は二次元の平面なので、四辺の外側は見えないので考えなくていいのですが、四辺から直角に折れ曲がった側面がある場合、そこを見ると立体的な現実性や物質感が際立ってしまいます。すると平面世界というイリュージョン性は損なわれます。 この無関係な外側があるというもやもやした両犠牲を隠すためにこそ額縁をはめるのではないかとも思われます。 画面からはその外側の側面は見えないけれど、それが現実にあることはわかっている、というのは、生の終わりに死があるのと似ています。死は確実に来るのに、生からはその外側なので知りえません。それでも人は死後に思いを馳せずにはいられません。 同様にこの宇宙の起源や果ての外側も気になります。 これは単純ですが解決しない厄介な事実として人類の悩みですから、画面の側面に思いを馳せることも必須のように思えます。 そのため、額縁をつけない、側面を強調した箱型作品にしました。 また、コラージュについても同じ動機です。何かを貼ると、その下にあるものが見えなくなります。ある次元が見えるために見えなくなる別の次元が必ずある、というテーマになります。 つまり、生のフィールドは、境界線に囲まれた少ない次元(2、3)の有限の領域であり、知りえないその外側が無限に続くように想定せざるをえないし、その内部にも折り畳まれた無限の次元系列を想定せざるをえない、ように見えます。 現実は意識が作り出しているモデルであり、知覚の断片的なデータを繋ぎ合わせたモザイク状のネットワークで、ジグソーパズルのように均質的な世界を作り上げる想定ではあっても、実際には不均一な不揃いで隙間だらけなので、幻想や空想で欠けているところを穴埋めしながら、未来に完成のシミュレーションを先送りすることになります。 作品仕様 デザインボードの箱(中が空洞で背面が空いている箱)　アクリル絵の具　綿布(コラージュ) 箱型全体に、何層にもアクリル絵の具を塗り固めてありますので、かなり堅牢で丈夫ですが、壁に設置するには、箱の内部に金属板枠を裏当てとしてはめるなどの処置が必要かもしれませんが、まだ未処理です。